薬について

① 薬の働き
② 薬の使い方 
③ ジェネリック医薬品
④  薬を飲まない治療
⑤ 薬の副作用

① 薬の働き

パニック症の薬物治療には、主に脳内化学物質を調整する薬と気分を調整する薬が 使われます。
脳内化学物質の調整には、主に抗うつ薬が使われます。薬の力で脳内ホルモンや  脳内科学物質と呼ばれる物の量を調節することが目的です。抗うつ薬の他に、   てんかんの治療薬などが使われることもあります。
気持ちを調整する薬は抗不安薬や安定剤などと呼ばれ、早く効いて短い時間作用する薬(短期作用型)やゆっくり効き始めて長く効く薬(長期作用型)など、効き方や 効いている時間によって数種類があります。
漢方薬にもこういった作用をする薬があり、西洋薬と組み合わせて使われることが あります。漢方医療の専門家による漢方薬だけの治療を受ける方法もありますが、 健康保険の対象にならない場合、費用が多くかかることがあります。

これらの薬はどういう働きをするのでしょうか。たとえば私達が骨折するとギブスをはめて怪我した部分を保護し、怪我の悪化を予防して回復を早めます。パニック症の場合は、薬が症状の悪化を防ぎ回復を早める手助けをします。身体の外から病気に 働きかけて治療していくのです。多様な薬が開発されたことで、短期間で症状が  回復する人も現れるようになりました。

② 薬の使い方

 薬はお医者さんの処方通りに飲むことが基本です。特に急性期と言われる発症からすぐの時期に、勝手に量を増減したり止めたりしてはいけません。認知行動療法も 併用して治療していけば症状は安定し、やがて薬の種類や量は段階的に減らして  いけるようになります。調子の良い日が続いて薬を飲むことを忘れたなどして、  自然に断薬に向かうことも珍しくありません。
症状が安定していても特別なストレスがかかったりすると、不安になったり小さな 症状が現れたりすることがあります。抗不安薬なども上手に使って、発作の種を  大きくしないよう工夫してください。

重要な会議がある・卒入学式がある・海外出張があるなど心配事がある時は、当日 だけでなく数日前から少しずつ抗不安薬(安定剤)を飲むなどして、予期不安を  少なくしておくと乗り越えやすいでしょう。成功体験を積み重ねることで、やがて 薬なしでも対処できるようになります。

③ ジェネリック医薬品

 パニック症の治療には、いくつかのジェネリック医薬品が発売されています。  これらの医薬品は先発薬と内容がよく似ていますが、成分の量やコーティングの  仕方などは薬によって違います。先発薬を選ぶときと同じように、自分に合った  薬を探す必要があります。
薬局の料金は薬の値段だけでなく処方の方法によっても変わりますから、値段の  安さだけで薬を選ぶことは正しくありません。

④ 薬を飲まない治療

パニック症の治療は、必ず薬を飲まなければならないわけではありません。薬を  使った治療が始まるまでの時代には、「森田療法」や「生活の発見会」などの心理 療法や患者会でパニック症を克服したもたくさんいました。また「厚生労働省の  パニック症研究班」の発表でも、「薬を使わず認知行動療法などの心理療法で治療 するほうが望ましい」と考えるお医者さんも多くいらっしゃいました。
認知行動療法は、自分で身体を調整し身体の中から病気を治していく治療です。  患者側にも病気についての知識と心構えが必要ですから、指導・サポートしてくれるお医者さんやカウンセラーと協力して取り組むと取り入れやすいでしょう。

⑤    薬の副作用

 めまいを無くしたいと思って薬を飲んでいるのに、副作用の欄にめまいと書いて あるとか、自分のめまいが症状なのか薬の副作用なのかわからないというような  ことがあります。薬をやめたりまたは変えて症状がなくなる場合は、薬の副作用と いうことになりますが、勝手に薬を止めてはいけません。症状が表れる時の状況や タイミングをよく観察して、お医者さんに相談してください。